■Profile
ニックネーム:プニコ(プニcourt)
エックス:@punicourt
インスタグラム:@punicourt
出身:日本
職業:テディベア作家
■Art Gallery
――まずはじめに、簡単な自己紹介をお願いします!
「こんにちは。テディベアの技法を用いて、カラフルなキャラクターたちを制作しています」
――テディベア作家とのことで、物作りはいつ頃から始めているのでしょうか。また、独学ですか?
「中学生くらいから趣味としてオーブン粘土、羊毛フェルト、消しゴムはんこ等、暇があればなにか手を動かしていました。テディベア作りは2015年から独学で始め、1冊だけ「テディベア作りA to Z」という教本を読みました。その後、市販のキットを2つ作ってからオリジナルの型紙を作り始めました」
「制作工程はざっくり、①型紙を作る→②生地を決めて写し③裁断→④縫製→⑤綿詰め→⑥顔作りなど→⑦合体→⑧完成 となります」
「一般的なぬいぐるみとは少し違って、顔・両手足のパーツ5つに分けてそれぞれ作ってから、最後に合体させます。ちょっと面倒に思えますが、型紙はぬいぐるみよりも単純になりますし、綿もギュウギュウに詰まって丈夫になります」
▲ジョイントディスクとピン
「さらに綿詰めの前に、各パーツに丸い"ジョイントディスク"というものを仕込むことでテディベアの動きができるようになりますよ!」
――ご説明ありがとうございます!それでは、テディベアの魅力とは?
「魅力はやっぱり、天然素材を使っているところです。モヘア(ヤギの毛)やアルパカの生地や、ガラスの瞳が使われていて、本物の動物のような佇まいと美しさにグッと惹かれました」
▲生地。色んな色や毛並みがあります
「この天然繊維というのが一期一会で、いつも同じ生地が手に入るわけではありません。毎回違った仔が生まれるのがヤキモキしつつも魅力の1つです。仮に同じ生地で作っても、今度はお顔に個性が生まれますのでオンリーワンの存在になります。魅力いっぱいの生地は外国製で個人輸入しています。世界情勢の不安定化もあって最近は材料不足です。そのため一部に化学繊維を使うことも増えてきています」
「そして衣装ケースで保管していた生地が動物の形になって、撫でたり目を合わせたりできるようになることに感動があります。「キミ、あの時は生地だったのに立派になったね!」って作品が完成するたびに声をかけてあげたくなります(笑) 生地だったときの印象からガラッと変わることもあり、とても面白いです」
「テディベアとの出会いは百貨店の催事でした。そこではアーティストさんたちが作ったテディベアが売られていて、まるでメーカー品のように素晴らしいものでした。それを見て「個人でこんなに可愛いものを作れるなんてすごい!」と自分も作りたい気持ちがどんどん湧いていきました」
――これまでに参加した商業プロジェクト、及びビジネス活動歴について教えてください。
・教育出版さま 「MUSIC JAM KIDS 4」
表紙のぬいぐるみ3体を担当させていただきました。
こちらは主に小学生のための合唱曲集で、マーチングバンドをモチーフに制作しました。
・コスプレイヤー えなこさんの写真集
「エトワール」 へ6作品を作らせていただきました。
操り人形など新しい表現に挑戦できました。
「どちらもお話いただいた時にはドキドキで、こんな形で自分の作品を使ってもらえるなんて光栄でした…!特に 「MUSIC JAM KIDS 4」 はAmazonなどでも売られているので、調べると自分のぬいぐるみの姿が出てきて興奮しました(笑)」
――現在に至るまで、ご自身の嗜好に影響を与えた作品や好きなジャンルをお聞かせください。
「幼少期に過ごした家が外観・内装共に北欧風の住まいで、輸入家具・家電が多くありました。でも外に出れば近くに神社があったり小川や田んぼなど、日本の自然を沢山感じられる環境で育ったと思います。よく魚やカエルを捕っては飼ってました。家の中では動植物やペットの図鑑を読み、ヨーロッパの木のおもちゃや「吉徳」「Ty社」「kosen社」などのぬいぐるみたちと共に過ごしてきました。これらは物心つく前から母が買い与えてくれていたもので、最も大きな影響があったと思います」
ゲーム:「ポケモン」「モンハン」などモンスター系を中心に、「カービィのエアライド」「東方Project」シリーズなど。
あとゲーム実況者の「稲葉百万鉄(旧ボルゾイ企画)」さんが好きです。
映画:「ハリーポッター」「ナルニア国物語(1章)」「あらしのよるに」「ライオンキング」
アニメ:「カードキャプターさくら」「ストライクウィッチーズ」など。
※画像はこれまでライセンスを取ったものや非売のファンアートです。
――お気に入りの子をよろしければご紹介ください!
・お散歩大好き、サンポポ族の「ピックン」
「公園でピクニックした思い出を大切にしたくて作ったキャラクターです。(「ピックン」は個体の名前)
タンポポをモチーフにした10cmほどの小さな仔です。手染めしたシルクで作られています」
・クマーク種の「クロぼん」
「クマーク種は肉球から絵の具が滲んでいて、歩いたところにマークを残して縄張りを主張するクマのキャラクターです」
「クロぼん」は個体の名前で、なんとなくウチに残しておいたのですが、いつのまにか気に入ってしまって家族になっていました。知人にVtuberモデルを作っていただいたり、私の代理のようなポジションです。
・まったりウサギの「タリスタ」
「のんびりくつろいでいるウサギをモチーフにしたキャラクターです。月へ旅行に行く途中で流れ星と出会って(ぶつかって)一緒になってしまいました。持っている三日月のクッションはその時の月みやげです🌙」
「まったり者のタリスタとせっかちな流れ星は正反対で、喧嘩も多いけどなんとかやっています。制作では座っていても寝ていてもリラックスしたポーズになるように気をつけました」
・「pico(ピコ)」
「ぬいぐるみに扮した偵察用ウサギ型ロボットで、ジーッとこちらを見つめてきます。寡黙でほとんど喋りませんがpico同士は常に情報共有しています」
「個体ごとに耳にシリアルナンバーが入っています。制作では初期に作ったキャラクターです。「タリスタ」はくつろいでるウサギなのに対して、「pico」は警戒して立ち上がったウサギをモチーフにしています」
「初期作品ならではの大胆な型紙や、カクカクしたシルエットに人工物を感じて気に入っています。名前の由来は小さな数の単位を表す"ピコ"と電子音のオノマトペから」
――続けて、今まで一番難しかった子を教えてください。
「「ターファ」という亀の作品です」
「"亀毛兎角"という四字熟語をモチーフにした作品で、兎角の「アルミィ」と対になります。「アルミィ」は活動初期からの作品でその時から「ターファ」の構想は持っていましたが、当時は技術的に亀の甲羅を作ることが困難で、制作できたのは作り続けて5年経ってからでした。頭の中でずっと考えていた仔が目の前に生まれてきてくれたときは、なんとも言えない喜びがありました」
▲「ターファ」と「アルミィ」
「初期案では亀らしくクチバシがあるデザインだったりしましたが没になりました。名前の由来はturtle(タートル/亀)+ fur(ファー/毛)=ターファ そのまんまですね(笑)モデルは実家近くの神社の池に住んでる亀たちです」
▲初期デザイン(左)と修正案(右)
――インスピレーションはどこから得られているのでしょうか?
「外に行って何かを体験したときや、本物の動植物からが多いです! 特に動物は生で見たり触ったりすると、最初にイメージしていた「可愛い/ふわふわ」だけでなく、「怖い/大きい/ゴワゴワ/温かい/獣臭い/鳴き声」など沢山の情報が一気に流れ込んできます。最初のイメージとは逆の要素も含まれていますが、だからこそ力強さを感じて「美しい!」と感動するのです」
「そして生き物の生態や、自分自身のこれまでの環境や感情をモチーフに重ねて考えることがあります。引きこもりモモンガの「スキップス」は、私が学生時代の一部を実際に引きこもって過ごしていた時の経験から来ています。モモンガは夜行性で半日以上は引きこもって寝て過ごしますので、その生態を重ね合わせて生まれたキャラクターになります」
▲引きこもりモモンガのスキップス
「名前の由来も当時私が「スキップ」というフリースクールへ通っていたこと(おそらく施設の名前は不登校=スキップスクールということから来てるかと) 。そしてモモンガの特徴である「飛ぶ(滑空)」という意味が含まれています」
▲初期作品のオオカミとアルミィ
「あとは友達との会話から…なんてこともあります。「アルミィ」が生まれたときは【肉食と草食】をテーマに展示を考えていた時で、肉食はオオカミで決定、草食はウサギかヤギで迷っていました。雑談で友達にどっちがいいかと聞いたら「どっちもだよ!」と言われ、でも1体しか作る時間が無かった私は2体を合体させることに決め、「アルミィ」が生まれました」
「なので「アルミィ」は先ほどの四字熟語"亀毛兎角"のキャラクターですが、生まれのキッカケは四字熟語からではありません。名前の由来は一角ウサギの"幻獣アルミラージ"から来ていますが、ヤギが混ざっていることから"牧神パン"のようでもあったので「パーン」というもう1つの名前の候補がありました」
――創作で大切にしていることやテーマはありますか?
「動物と会ったときの緊張感を表現することでしょうか。あとは「物と生き物」「自分と他人」について頻繁に考えます。「生き物」とは制御できない存在です。例えば道端で動物に会ったときにハッとしませんか?私は動物って怖いと思うんです。勝手に動くし近づきすぎたら何をされるかわからないし、害のないはずの虫1匹ですら、近くにいたら目が離せないですよね」
「それって「他人」ってことなんだと思います。でもだからこそ「一緒の空間にいる別の生き物」として認識できます。そしてそれがある意味でストレスであり、ある意味で寂しくないってことでもあるし…「自分以外の誰か」を認識できることって幸せだなと思うんです。それは自分自身を認識することにも繋がります」
「私がペアや対になる作品を作ることが多いのはこのためで、いずれも「自分と自分以外の誰か」をテーマにしています。逆に「物」は制御できる安心感があります。所有した物はどこにも行かないし変わらない、いわば「自分」と同列の存在だと思うんです。テディベアは「物」であって「生き物」ではありません。けど「物」である安心感を持ちながら「生き物」の緊張感や存在感を表現できたら、テディベアは物でも生き物でもない、「新しい何かで在れる可能性」があると思っています」
――今後、挑戦してみたいことはなんでしょうか?また、何か告知がありましたらぜひ!
「やっぱりポケモンなど好きなコンテンツに関わるお仕事や、カプセルトイやプライズ化など!めちゃくちゃ憧れます(笑)」
「他にもテディベアは非常にニッチなジャンルの気がするので、将来的にはワークショップやキットや教本を出すなど、テディベア作りを身近に感じられるような活動ができたらと思っています。そしてまだまだ頭の中にいるキャラクターたちがいますので、まずはその仔たちと実際に会えるように頑張りたいです。 個展もいつかやってみたい!」
「作品は不定期で通販していますので、Twitterをチェックしていただけたらと思います!」
――インタビューありがとうございます! 最後にファンに一言お願いします!
「活動を通じて、頭の中にいた沢山の作品と出会えたこと、憧れの作家様とお話しできたこと、多くの方に喜んでいただけたこと、作品たちが可愛がられていること、これまで嬉しいことがいっぱいありました。いつもずーーーっと応援してくださっているみなさんのおかげです!ありがとうございます!これからも精一杯頑張りますので、今後とも見ていただけると嬉しいです♪」
■ライタープロフィール
ニックネーム:笹本千尋 -sasamoto chihiro-
東京都在住
ツイッター:@tiam_00
自己紹介:2021年に日本大学芸術学部文芸学科を卒業後フリーでライターをしております。
ラ・ペオニア運営会社の株式会社ジニヤズでは、若手クリエーターたちの作品や発想、活動をインタビューを通して世界中の多くの人々に伝えることを応援しております。
多言語(日中英)翻訳と情報発信のサポート、ビジネスチャンスのクロージング斡旋も行っております。インタビューや業務提携などのご希望がある方は、お気軽に「お問い合わせ」までご連絡くださいませ。
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